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船場のおひなさま

 2月26日から3月3日の間、大阪の歴史や文化を発信したいという思いで「船場のおひなまつり」が開催されました。2015年から始まったこの催しも今年で10回を迎えたそうです。船場ゆかりの9つの旧家に伝わる大正から昭和初期の雛人形が7つの会場で展示され、地図を片手に、たくさんの人が訪れていました。

1.小山家のおひなさま(淀屋橋センタービル、神宗)
 神宗(かんそう)は、天明元年(1781年)、靭で海産物問屋(三町問屋)を構えたのが始まりで、塩昆布、佃煮などで知られる老舗です。その創業者である小山家が所有する雛人形が、本店が入っている淀屋橋センタービルの1階に展示されていました。

 神宗淀屋橋本店が入る、淀屋橋センタービルは、1998年に竣工した地上16階、地下2階のオフィスビルです。

  • 淀屋橋センタービル

2.鷹岡家のおひなさま(鷹岡株式会社本社ビル1階)
 1885年に毛織物の卸商社の鷹岡商店として創業し、それ以来、紳士服の高級服地を中心に、婦人服地や洋品雑貨にも手掛ける商社です。
 会場では、鷹岡家に伝わる4つのお雛祭りの飾り物が出されていました。あまり見たことがない御殿雛(御殿の中に雄雛、雌雛が入っている)、台所用品の飾り物など珍しいものが展示されていました。おひなさまの飾りとして花嫁道具が入っているのは知っていましたが、台所用品があるのは初めて知りました。会場では関係者の方がいらして、丁寧な説明を受けました。

3.船場商家のおひなさま(田辺三菱製薬株式会社ビル)
 このお雛様は、北久宝寺で貿易商を営んでいた船場商家のものです。
 道修町と三休橋筋との交差点にある田辺三菱製薬株式会社の本社ビルは、2015年に竣工し、地上14階建て、高さ70mの大きなビルです。一階はガラス張りになっていて、とても目立つビルです。そこの一階におひなさまが飾られていました。

  • 田辺三菱製薬ビル

4.新井家のおひなさま(伏見ビル、船場倶楽部)
 輸入雑貨商(ドイツ製タオルを入手したことから泉州でのタオルの製造のきっかけを作る)や証券業(新井証券を設立)などを営んだ、新井株式会社の創業者、新井末吉が孫娘たちに贈った雛人形です。

5.三原家のおひなさま(伏見ビル、船場倶楽部)
 三原家は「赤玉フトン袋」で有名な赤玉グループの創業家です。このおひなさまは創業者三原栄次郎が娘に贈ったものです。

6.生駒家のおひなさま(伏見ビル、ギャラリーもず)
 生駒家は刀装具を商っていましたが、明治以降は時計を扱うようになり、現在株式会社生駒時計店として営業しています。このおひなさまは、先々代の社長が娘のために買いそろえたものです。

 これら3家のおひなさまが飾られている伏見ビルは、大正12年(1923年)に竣工し、当初はホテルとして使用されていたそうです。ギャラリーには他のおひなさまも飾られていました。

  • 伏見ビル

7.別所家のおひなさま(少彦名神社)
 別所家は、少彦名神社の宮司を務める家です。このおひなさまは、明治時代に別所家に嫁がれた奥様の雛人形です。
 少彦名神社は、大阪の町の中心部にある道修町にある薬の神様、神農さんとして親しまれている神社です。1945年の大阪大空襲の被害を受けず、昔の様子を残しています。

8.豊田家のおひなさま(大阪証券取引所ビル1階アトリウム)
 豊田家は、延宝3年(1675年)高麗橋で糸店として創業し、明治になり生地も扱うようになり、繊維商社「豊田商店」として営業を拡大してきました。現在は「豊田産業株式会社」として不動産業などの事業を行っています。展示された雛人形は、昭和7年(1932年)長女誕生のお祝いに贈られたものだそうです。
 大阪証券取引所のビルは、昭和10年(1935年)に建てられました。老朽化などの理由により、平成16年(2004年)超高層ビルになりましたが、旧ビルのシンボルであったドームの外観は残りました。また、1階はステンドグラスの窓を持つ広間(アトリウム)となっていて、喫茶店もあります。

  • ライオン橋(難波橋)

9.芝川家のおひなさま(芝川ビル)
 芝川家は、欧米品の輸入業を起こし、後に土地、建物関連の業種に移行したそうです。
 このビルは昭和2年(1927年)に竣工したもので、当時和風木造家屋が多かった中、鉄筋コンクリート造りの耐震、耐火性を考慮したビルは珍しかったそうです。このビルは、商売のためと言うより、自家用として使うことが目的だったそうです。現在は店舗などが入っています。
 ここで公開されたおひなさまは、残念ながら写真撮影は許されませんでしたが、会場には係の方がいて、詳しい説明を聞くことができました。

マヤ・インカの装飾が飾られているビルの外観

おひなさまが展示された4Fのモダンテラス

  • ビル、エントランス部分

  • 郵便受け

 いかがでしたか?一口に雛人形と言っても、いろんなお人形がありましたね。残念ながら上記したような形での雛人形の展示・公開はこれで最後になるそうです。見納めのお人形もあるかもしれないとのことで、今年、廻れてよかったなと思っています。

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